プロフィール

Author:研究所長です
FC2ブログへようこそ!
オイラーを研究して30年。所員募集中。
オイラー生誕300年を期して熱くオイラーを語り合いましょう。


カテゴリー


最近の記事



FC2カウンター


月別アーカイブ


最近のトラックバック


ブロとも申請フォーム


曲線を語る『解析概論』の記述は続き,イタリアの数学者ジョゼッペ・ペアノが1890年に発見した「ペアノ曲線」が紹介されています.それは,平面上の正方形の内部の点をすべてもれなく通過する連続曲線,言わば「平面領域を埋め尽くす曲線」です.直線は一次元という素朴なイメージがありますから,このような曲線は直観に大きく反し,いかにも奇妙です.ただし,ペアノ曲線には無数の重複点をもっています.
 ペアノ曲線を紹介した高木貞治は,「このような曲線は迷惑である.上記の定義は曲線の定義として,あまりに広汎に過ぎるのである」と言い添えましたが,曲線というものの範疇が極端に広がってしまうのは,関数概念が広すぎるところに原因があるのですから,連続関数をもって連続曲線を把握しようとする立場をとる限り仕方のないことで,高木貞治が「自縄自縛」という通りの現象です.
 ペアノ曲線に続いてヒルベルトもまた同種の曲線を見つけました.それは「ヒルベルト曲線」と呼ばれる曲線で,高木貞治の『解析概論』には見られませんが,ピカールの『解析概論』には出ています.グルサの『解析教程』にはペアノ曲線の紹介はありますが,ヒルベルト曲線については脚註に文献が記載されているのみにとどまっています.このようなところも高木貞治の『解析概論』はピカールよりグルサに似ています.
 関数をもって曲線を制御するというアイデアは今日ではごく普通に受け入れられていますが,微積分の歴史を回想すると順序は逆で,微積分の草創期の数学者たちはだれも,曲線とは何かとは考えませんでした.ロピタルのテキストの冒頭に曲線を語る言葉が出ていますが,それによると曲線とは「無限に小さい辺をつなげて形成される無限多角形」のこととされています.辺々はつながっていると想定されているように見えますから,連続曲線が考えられていることがわかります.曲線上の任意の点Pを指定すると,上記のような観点に立てば,点Pを含むひとつの辺が必ず存在します.それは無限に小さい線分ですが.それを限りなく延長して生成される直線は,点Pにおける曲線の接線にほかなりません.
 「無限小の辺をもつ無限多角形」という曲線のとらえ方は,そのように曲線を観察するという立場を打ち出したということであり,曲線を定義したのではありません.あくまでも仮想上の観念であり,正しいか否かは問うところではなく,そのように見れば微分法を適用して接線を引く道筋が見えてくるということにすぎません.関数の概念がない時代にすでに多種多様な曲線が見つかっていましたし,それらを「無限小の辺をもつ無限多角形」と思うことにして微分法を適用すれば,接線を正しく引くのはいつでも可能です.
 これに対し,オイラーはまずはじめに関数概念を導入し,曲線を関数のグラフとしてとらえ,関数の諸性質に基づいて曲線の諸性質を認識しようと試みました.その際,オイラーが提案した関数は「解析的な式」だったのですが,既知の曲線はどれもみな適当な解析的式により把握することができました.解析的式というものの一般概念はありませんが,既存の曲線を理解することができる程度のものを念頭におけばよいのですから,一般的な定義など,オイラーには不要だったにちがいありません.オイラーの段階では関数が先に出てきますが,それでもなおオイラーが提案したのは曲線の新しい把握の仕方なのであり,曲線というものを定義したのではありません.

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://reuler.blog108.fc2.com/tb.php/437-6e3a0d8d


Powered by FC2 Blog