プロフィール

Author:研究所長です
FC2ブログへようこそ!
オイラーを研究して30年。所員募集中。
オイラー生誕300年を期して熱くオイラーを語り合いましょう。


カテゴリー


最近の記事



FC2カウンター


月別アーカイブ


最近のトラックバック


ブロとも申請フォーム


話が前後してしまいましたが,関数というものの概念規定の様子を観察しておきたいと思います.『シュヴァルツ解析学』の巻1「集合・位相」の第1章「集合論」の第2節は「写像あるいは関数」と題されていて,冒頭に関数の定義が出ています.関数と写像は同じものの別名であるというのです.

《E, Fを集合とする.Eの各元xにFの一つの元を対応する対応(規則)fをEからFへの写像あるいはEで定義されてFに値を取る関数と言う. xに対応するFの元をf(x)と書く.記号f:E→F(註.原文ではE→Fという表記において,矢印→の上にfが添えられています)は,fがEからFへの写像であることを表す.E, Fをそれぞれこの写像の始集合,終集合と言う.》

「始集合」「終集合」という言葉は珍しく,定着しているとは言えないように思います.よく使われるのは「定義域」と「値域」で,Eが関数fの定義域,Fが値域です.

《写像fと,fによってある元xに対応する元f(x)を注意深く区別しなければならない.しかし,実用の見地から言うと,この区別をつねにすることはあまり簡単ではない.たとえば「関数sin x」というのは便利だが正確ではなく,「関数sin」と言うべきなのである.sin xはこの関数のある点xでの値ということになる.しかしこれでは不便なので,関数「x→sin x」と言うか,または「f(x)=sin xによって決まる関数f」とか言うことにすればよい.》

このような関数の定義は今日の数学では標準的なもので,広く受け入れられていますが,「変数」という言葉が見られないのは注目に値します.この定義のかなめは,Eの元xに対応するFの元が「ただひとつ」と規定されているところですが,この点を強調すると,シュヴァルツのいう関数もしくは写像の実体は「一価対応」であることがわかります.関数をy=f(x)と表記すると,xもyも変数で,特にxは独立変数,yは従属変数と呼ばれることがありますが,シュヴァルツの関数には変数はありません.変化するものは何もなく,ただ「(一価)対応」だけが指定されているというのですから,中味は空疎であり,関数とは何かと問うてみても,この定義は何も教えてくれません.対応を一価に限定したのはどうしてなのか,何かしらわけがありそうにも思えますが,定義そのものは何も語りません.
 これは今日の数学に見られる際立った特徴で,どの概念にも,少なくとも概念規定の文言それ自体には「固有の意味」というのは存在しないのです.その代り,「意味」が欠如している分だけ守備範囲は極端に広く,集合と対応がありさえすれば,何でもみな関数の一語で把握されてしまいます.このような広い一般性を包括する状況を尊ぼうとする傾向は以前には見られなかったもので,20世紀の後半,第二次世界大戦が終結したころから目立ち始めました.「意味」の欠如は数学の理解を困難にする大きな要因です.

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://reuler.blog108.fc2.com/tb.php/429-ac8d55f9


Powered by FC2 Blog