正17角形の作図の可能性の発見に寄せるガウス自身の言葉も遺されています。"Intelligenzblatt der allgemeinen Literaturzeitung"の第66号(1796年6月1日発行)の教養のページに「新しい発見」という記事が出ています(554頁)が、これを書いたのはゲッチンゲン大学の学生ガウスでした。ガウス全集、巻10、第一分冊の3頁に収録されています。"Intelligenzblatt der allgemeinen Literaturzeitung"はイェーナ大学の雄弁術詩学教授のクリスティアン・ゴットフリート・シュッツという人が1785年に創始した新聞で、しばしば「一般文芸新聞」「文芸公論」「綜合文芸新聞」などという訳語があてられます。ここではこの記事を高木貞治の訳文により紹介したいと思います。
《正多角形の中で三角形、五角形、十五角形及び辺数を次々に2倍して生ずるものの作図が可能であることは幾何学の初歩を学んだものは誰でも知っていることで、そこまでは既にユークリッドの時代に来ていたのであるが、その後は初等幾何学ではそれ以上には出られ得ないことと一般に信ぜられていたように見える。少なくとも予はこの方面に於て更に一歩を進める試みの成功したことを聞かないのである。
この故に、今上記の正多角形の外になお多くのもの、例えば十七角形などの作図が可能であることの発見は注意に値するものと考える次第である。この発見は実は一層広範な或る理論の系題に過ぎないのであるが、その理論はなお少しく未完成の所があるから完成の上で速かに発表するであろう。
C.F.Gauss(ブラウンシュワィヒ出身、ゲッチンゲン大学数学学生)》
正三角形と正五角形の作図可能性の発見は著しい事実ですが、これを基礎にすると、正15角形の作図のまた可能であることもわかります。また、任意の円弧の二等分点もまた作図可能、言い換えると定規とコンパスのみを用いて指定することができますから、正n角形の作図が可能なら、正2n角形の作図もまた可能であることになります。こんなふうにして作図可能な多角形は際限なく増えていきますが、それは形式上の増加にすぎず、別段、本質的に新しい事実が加えられているわけではありません。これに対し、正17角形の作図可能性の発見は真に新しく、ガウスの言うように、ユークリッド以来、ということは2000年ぶりにもたらされた発見なのでした。
ガウスは「この発見は実は一層広範な或る理論の系題に過ぎない」と言い添えていますし、しかもその理論にはなお未完成のところがあるとも言っています。「一層広範な或る理論」というのは数論に所属する平方剰余の理論を指していて、円周等分の理論(正多角形の作図理論)から平方剰余相互法則の証明を取り出そうとするところに、ガウスの企図した真のねらいがひそんでいたのですが、最後の詰めがむずかしく、この構想はなかなか実現されませんでした。
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