D.A.の緒言の末尾の一節を見ると、円周等分の理論への言及が目に留まります。簡単な言葉ですが、心の奥深い場所につきささり、わかるとかわからないとかという次元を超越して、神韻縹渺とした印象があります。数学という学問に特有の神秘感があらわになるのはこのあたりです。
D.A.の緒言(7)
《第7章で取り扱われる円の分割の理論、もしくは正多角形の理論は、なるほどそれ自身はアリトメチカに所属するものではない。しかし、それにもかかわらず、その諸原理はひとえに高等的アリトメチカから取り出さなければならないのである。このような状勢はおそらく幾何学者諸氏にとっては意表をつく出来事であると思われるが、私はこの泉から汲むことのできる数々の新しい真理が、意外に思う気持ちに劣らぬほどに彼らのお気に召すよう、希望してやまない。》
円の分割の理論という場合の分割は「長さの等しいいくつかの部分に分けること」を意味しますから、これを簡略化して「円周等分の理論」と言っても同じです。また、円周上に等分点を指定して線分で結んでいけば、正多角形ができあがりますから、円周等分の理論を正多角形の理論と言い換えても論理上は同等です。いずれにしても、これは数学的に見れば簡単な初等幾何の問題です。ユークリッドの『原論』にもすでに正多角形の作図問題というのが出ていて、そこでは正三角形と正五角形は定規とコンパスのみを用いて作図可能であることが示されていました。ガウスはこれを大きく押し進めて、正17角形の作図が可能であるという事実を発見しました。それが、1796年3月30日付の数学日記の第1項目の記事の内容です。ところが上記の緒言で表明されたガウス自身の言葉によれば、正多角形の理論の根柢にあってこれを支える諸原理は、高等的アリトメチカであるというのですし、だからこそ、ガウスはこの理論を「整数論」のいう名の書物に収録したのでした。いかにも不思議なことと言わなければなりません。30年近くの昔、はじめてガウスのD.A.を読んだとき、もっとも強い印象を受けたのは、緒言のこの部分でした。
D.A.の緒言は、以下、簡単な結びの言葉が続いて終ります。D.A.の目次をここに再現しておきたいと思います。
1 数の合同に冠する一般的な事柄
2 一次合同式
3 冪剰余
4 二次合同式
5 二次形式と二次不定方程式
6 これまでの研究のさまざまな応用
7 円の分割を定める方程式
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