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日々の記録9
・岡潔先生の第1論文の印象(9)
・イテレーションから値分布論へ
いよいよ洋行が決まって神戸港で日本郵船の北野丸に乗船したのは昭和4年4月11日のことでした。5月末、フランス到着。京都ではジュリアの論文を出発点として有理関数のイテレーションを研究していましたが、フランスではこれを代数関数のイテレーションに押し広げようとする方向に思索を重ねました。1930年6月ころには「あるひとつの非一次有理関数と交換可能な代数関数」という論文をフランス語で書き、タイプした原稿をジュリア先生のもとに提出し、それからパリを離れてみちさんと治宇さん、それにA・ドゥ・フェロディと連れ立ってブルターニュ、ドルドーニュ方面に旅行に出かけました。治宇さんというのは岡先生がパリで知り合った友人の中谷治宇二郎のことで、考古学者です。フェロディはロシア人の未亡人で、岡先生とみちさんのフランス語の先生です。
7月末にブルターニュのカルナックに到着し、サンミッシェル古墳の中腹の「古墳ホテル」(オテル・ド・テュミュリュ,Hotel de Tumulus)に入りました。ここでジュリア先生に宛てて書かれた8月6日付手紙の下書きが残されています。翌7日には「あるひとつの非一次有理関数と交換可能な代数関数」の訂正稿を書いています。フランス滞在も丸1年をこえて、相当にまとまりのある果実が摘まれたのでした。ジュリア先生に届けたのですから、学術誌に掲載されることを望んでいたことと思われますが、何か気に入らないことがあったようで、後日みずから撤回してしまいました。
代数関数のイテレーションの研究では、日本文草稿、フランス語で書かれた手書きの原稿、フランス語のタイプ原稿と、3種類の原稿が今も遺されています。
代数関数のイテレーションののち、岡先生が関心を寄せたのは1変数関数論の値分布論と正規族の理論でした。ジュリアの著作に
『本質的孤立特異点をもつ1価関数についての講義』
(1923年。Leçons sur les fonctions uniformes : à point singulier essentiel isolé, professées au collège de France)
があり、コレージュ・ド・フランスにおける講義録ですが、岡先生はこの著作に影響を受けた模様です。
また、ポール・モンテルの著作
『解析関数の正規族とその応用』
(Leçons sur les familles normales de fonctions analytiques et leurs applications,1927年)
も読みました。この時期のフランス語の論文草稿に
「ピカールの定理の性質を備えた円の系列」
があり、そこに9月半ばすぎころからの研究と明記されています。大きく二群に分れ、第1群は1-4, 15-19, 22, 31-32頁、第2群は6, 8-14, 17頁が遺されています。8月7日に代数関数のイテレーションの論文の訂正を書き、それからジュリアとモンテルの著作を読み、値分布論の研究に取り組み始めたという順序で推移したのであろうと思われます。9月半ばといえば、古墳ホテルで40数日をすごしたのち、レゼイジーに移動したころになります。10月半ば、サン・ジェルマン・アン・レに移りました。
・イテレーションから値分布論へ
いよいよ洋行が決まって神戸港で日本郵船の北野丸に乗船したのは昭和4年4月11日のことでした。5月末、フランス到着。京都ではジュリアの論文を出発点として有理関数のイテレーションを研究していましたが、フランスではこれを代数関数のイテレーションに押し広げようとする方向に思索を重ねました。1930年6月ころには「あるひとつの非一次有理関数と交換可能な代数関数」という論文をフランス語で書き、タイプした原稿をジュリア先生のもとに提出し、それからパリを離れてみちさんと治宇さん、それにA・ドゥ・フェロディと連れ立ってブルターニュ、ドルドーニュ方面に旅行に出かけました。治宇さんというのは岡先生がパリで知り合った友人の中谷治宇二郎のことで、考古学者です。フェロディはロシア人の未亡人で、岡先生とみちさんのフランス語の先生です。
7月末にブルターニュのカルナックに到着し、サンミッシェル古墳の中腹の「古墳ホテル」(オテル・ド・テュミュリュ,Hotel de Tumulus)に入りました。ここでジュリア先生に宛てて書かれた8月6日付手紙の下書きが残されています。翌7日には「あるひとつの非一次有理関数と交換可能な代数関数」の訂正稿を書いています。フランス滞在も丸1年をこえて、相当にまとまりのある果実が摘まれたのでした。ジュリア先生に届けたのですから、学術誌に掲載されることを望んでいたことと思われますが、何か気に入らないことがあったようで、後日みずから撤回してしまいました。
代数関数のイテレーションの研究では、日本文草稿、フランス語で書かれた手書きの原稿、フランス語のタイプ原稿と、3種類の原稿が今も遺されています。
代数関数のイテレーションののち、岡先生が関心を寄せたのは1変数関数論の値分布論と正規族の理論でした。ジュリアの著作に
『本質的孤立特異点をもつ1価関数についての講義』
(1923年。Leçons sur les fonctions uniformes : à point singulier essentiel isolé, professées au collège de France)
があり、コレージュ・ド・フランスにおける講義録ですが、岡先生はこの著作に影響を受けた模様です。
また、ポール・モンテルの著作
『解析関数の正規族とその応用』
(Leçons sur les familles normales de fonctions analytiques et leurs applications,1927年)
も読みました。この時期のフランス語の論文草稿に
「ピカールの定理の性質を備えた円の系列」
があり、そこに9月半ばすぎころからの研究と明記されています。大きく二群に分れ、第1群は1-4, 15-19, 22, 31-32頁、第2群は6, 8-14, 17頁が遺されています。8月7日に代数関数のイテレーションの論文の訂正を書き、それからジュリアとモンテルの著作を読み、値分布論の研究に取り組み始めたという順序で推移したのであろうと思われます。9月半ばといえば、古墳ホテルで40数日をすごしたのち、レゼイジーに移動したころになります。10月半ば、サン・ジェルマン・アン・レに移りました。
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