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新数学人集団(SSS)の時代 ノート51 少数精鋭主義は研究教育機関を破壊する

Lさんの議論は次の段階に移ります。少数精鋭主義の立場から見ると、数学はだいたい無用のものであり、しかもその進展にとって意味のあるのは真に優秀な少数の精鋭だけだということになります。この考え方は一般に多くの学生や研究者たちを失望と落胆に落し入れ、孤立した生活態度に追い込みます。そればかりか、研究機関において優秀と目されている少数の精鋭ですら、しばしば落胆もしくは焦燥に追い込まれてしまい、多くの誤った考え方と結びついて、はなはだしいときには死に追いやることさえあります。Lさんはこんなふうに指摘して、それからさらに言葉を続けます。

・少数精鋭主義は日本の数学の研究、教育機関で非常にろこつな形で破壊的な役割を果している。
・物理の坂田昌一が「自然」誌上で論じたこと。大学における研究と組織について。大学内の研究室にいる若い科学者の情熱をさまし、研究の発展を妨げるもっとも本質的な原因は、教授が人事から研究の進行までを独裁的に行うようなシステムにあり、これが師弟間の親分子分関係や講座間のセクト主義を生じ、研究の交流を妨げるばかりでなく、研究室におけるすべての封建的害悪の源になっている。
・数学においてもこの問題は非常に重要である。人事に関する問題はいたるところで封建的な風潮の源になっている。極端な場合には人事はおろか、共同研究から個人的な研究の具体的な方向までが実質上一方的な統制のもとに置かれ、研究室の外部との接触すら極度に嫌うという統計数理関係の某国立研究所のような例すらある。
・このような状態を打ち破って近代的な研究機関としての機能を果すためには、少なくとも相互に親密な、比較的雑務から開放された、しかも仕事の発表などをあせらない落ち着いた研究の雰囲気を作り上げることが望ましい。さらに、一定の慣習または制度により、若い研究者から教授までが、多くの研究費、組織費、人事上の問題について検討する機会をもち、講座間の往来は自由であり、全体が親密な協力体制にあることがいっそう望ましい。
・このような目標に向って多くの研究教育機関がさまざまの程度にさまざまの段階を経てみずからを近代化して我が国の学問の後進性を克服していった過程を見ることができる。

 このあたりはどうも意を汲みにくいのですが、せっかくこのように運営されていながら、ひとたび少数精鋭主義やその他の誤った考え方に支配されるや否や、その機関は、しばしば他よりもいっそう徹底した形で、学問の進展に害のある我が国の学問の後進性や植民地性を保ち、推し進めるものになり果てるというのです。このように宣言した後に、Lさんは「どのようにであろうか」と問題を提示して、みずから所見を語ろうとしています。

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