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新数学人集団(SSS)の時代 ノート43 協同研究のことなど

国際数学者会議の全容を見たいと思い、『月報』に掲載された関連する記事を読んでいるところですが、ここまでのところを回想すると、SSSの特徴というか、めざしていたもののいくつかが明らかになってきたように思います。たとえば、「数学とは何か」というふうな根源的な問いに関心を寄せていた様子ははっきりと感じられます。
数学を学ぶというと「理論」を勉強するほかはありませんが、何をやっているのかわからなくなるという疑問を率直に表明したエッセイがありました。「理論」を学んでも何のためなのかわからない。それで困惑して、どうしたらよいのだろうかという主旨でしたが、実はこの問いに対する答の所在は明白で、「理論」を生み出すもとになった「問題」というのが存在するというのでした。原点に帰って「問題」を把握し、「問題」から「理論」へといたる道筋を理解するというふうに歩を進めていけば、何をやっているのかわからないという疑問はおのずと解消します。というよりも、「理論」の意味はその泉となった「問題」に宿っているのですから、そもそも疑問が生じる余地はありません。
 もし諸理論のもとになった一群の問題群のすべてを把握するというようなことができたなら、数学とを全体としてひとつの学問として受け止めることが可能になりそうですが、『月報』のエッセイでは、そのようなことを体現した人物としてヒルベルトの名が挙げられていました。これに対しSSSが打ち出したのは「協同研究」の構想でした。たとえ未熟なものであっても思いついたことをみなに伝えて共有し、理解を深めていくことはできるのではないか、そうすることにより「理論」の壁をこえて数学の源泉にせまることができるのではないかという考えです。
 SSSの仲間が語り合って到達した有力な構想だったのですが、ヴェイユはこれを一蹴し、数学のアイデアというものは個人にしか訪れないと主張して共同研究というものを真っ向から否定しました。この対立はSSSとヴェイユについて考えていくうえで実に興味深いテーマです。
少数精鋭主義と「ボロボロ」ということもSSSが絶えず問題にしていたテーマでした。SSSのメンバーの中にも少数精鋭に該当する人はいたのですが、「ボロボロ」を自認する人も多かった模様です。この問題は具体的には大学院問題として顕在化することもありました。少数精鋭主義を主張する人もいて、SSSはそれに抵抗する姿勢を示したのですが、このあたりの消息はもう少し観察していく必要があります。
 整数論シンポジウムの報告にもどることにして、『月報』第3巻、第2号に掲載された記事「国際数学者会議に出席して」を一瞥してみたいと思います。著者は「久賀、郡司」と記されていますが、「久賀」は久賀道郎先生、「郡司」は郡司宏という人と思います。シンポジウムの概要をつかむことを目指して、諸事実を採取してみます。前に紹介したもうひとつの記事「整数論シンポジウムをめぐって」と重なり合うものもあります。
 9月9日は金曜日で、この日から研究発表と討論が始まりました。開会式は前日の9月8日。日本側の公式発表は53人。会場は第一生命保険相互会社6階の会議室。椅子yテーブルの配置図が示されていますが、それを見ると、黒板の前に演壇が設置されています。黒板と演壇の近くに議長席。その後方に記録係の席があり、テープレコーダーが2台備えつけられました。
演壇に向って、最前列に外国人数学者9人の席があります。9人というのはドイリング、ラマナタン、ヴェイユ、セール、岩澤、ネロン、アルティン、ブラウワー、シュヴァレーのことです。外国人数学者にはもうひとり、ゼリンスキーがいるはずですが、ゼリンスキーは招待されたのではなく、一年ほど日本に滞在する予定だったところにちょうどシンポジウムが開催されることになったというので出席することになったのだそうです。
 どのテーブルにもマイクロフォンが置いてありましました。会議室の一番うしろに長机が一列に配置され、10席あまりの傍聴席が設けられました。
 会議は9時30分に始まりました。シュヴァレーが議長です。

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