Entries

新数学人集団(SSS)の時代 ノート39 アイデア個人からのみ生れる

日本には数学の伝統がないから共同研究が必要だというSSSの主張に対し、ヴェイユはガウスやヤコビの例を挙げて応じました。共同研究の意義を一蹴し、数学はひとりでやるものだと言っているかのような発言でした。
伝統の問題に続いて、国際会議の招待者の問題が話題にのぼりましたが、これは盛り上がりを見せませんでした。共同研究をめぐる議論ではSSSとヴェイユの考えは正反対でした。

SSS
20世紀数学の特殊性はいろいろあるが、そのひとつは、数学が細かく専門に分れたため、そのすべてを知ることが不可能になり、共同研究が不可避的になったことであると思う。

話の糸口として持ち出されただけのことで、だれもがそれはそうだと言いそうな発言ですが、ヴェイユは言下に否定しました。

ヴェイユ
そんなことはない。今でもシュヴァレーやデュドンネは数学全般に通じている。
SSS
しかしそれは彼らが全体にわたって指導性を持っているか否かとは別だろう。
ヴェイユ
もちろんそれは別問題だ。だが、20世紀数学も、19世紀またはそれ以前の数学と本質的には変ってはいないことはきわめてたしかだ。アポロニウスのころの本を読んでみれば、その当時の学生も現在と同じく、数学は相互に関連のない多くの部門に分れていて、そのすべてに通じることは不可能だと思ったに違いないことがわかる。
SSS
だが、われわれは共同研究が必要だと思っている。そこでブルバキの例を聞きたい。
ヴェイユ
第一に注意することは、ブルバキの目的はブルバキ(教科書)を書くことで、だから本を書かなければ辞めてもらうことになっている。共同研究が目的なのではない。
 次にアイデアは個人の中からしか生れない。ブルバキの集りで、共同で何かのアイデアが生れることがあり、そのときはみな興奮するが、あとになってみると非常に小さいアイデアでしかない。それさえも共同で生れることは非常にまれなことなのだ。
 だがアイデアは孤立しているとなくなってしまう恐れがある。そんなとき、みなに話していれば、その雰囲気の中で自然に育っていく。
SSS
それも協力の成果ではないか。
ヴェイユ
そうではない。アイデアが人に話せるくらいにまで成熟するためには、場合により違うが、普通、数箇月から数年の間、個人の中で育まれていかなければならないものだ。これはまったくその人だけの問題だ。
SSS
我々はその後の発展をも共同研究の成果と呼びたい。
ヴェイユ
非常に明らかなことは、よいアイデアとか、新しい事実の発見とかは個人からしか生れないということだ。もし共同でそのようなことができたら至急電報で知らせてほしい。そんな驚くべきニュースに対しては電報代など安いものだ。
SSS
さっきブルバキは本を書くための団体だと言ったが、ブルバキに入っていればいろいろ目にみえない利益があるのではないか。
ヴェイユ
もちろんそうだ。たとえば最初は数学全体に通じていたのは私とシュバレーだけだったが、今では全員、たいていのものに通じるようになった。その他、有益なことがいろいろある。
 君たちは共同研究に非常に熱意をもっているように見えるから注意しておくが、共同で何かやるときは一種のテクニックが必要だ。ブルバキは共同で本を書くテクニックを発見したので、それ以後はそれに従ってうまくやっている。ただひとつ、共同でアイデアを生むテクニックだけは存在しない。
 最後に共同研究に対する忠告をひとつ。
 まずover organaizeしすぎないこと。
 次に、つねに、あらゆる種類の失望に対し備えていなければならないこと。失望は共同研究の一部分であると考えるべきである。
 第三にアイデアは集団から生れるのではなく個人から生れるということだ。
 このようなことに注意すれば、共同の成果はすばらしいものになるだろう。

 ヴェイユは、数学のアイデアは個人から生れると主張してとうとうゆずりませんでした。共同研究にこだわるのはSSSの当初からの際立った傾向だったのですが、何か深い理由がありそうでもありますし、し、注視していきたいと思います。

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://reuler.blog108.fc2.com/tb.php/2485-52e1ea30
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Extra

プロフィール

オイラー研究所の所長です

Author:オイラー研究所の所長です
FC2ブログへようこそ!
オイラーを研究して40年。所員募集中。
オイラー生誕300年を期して熱くオイラーを語り合いましょう。
西暦2011年は岡潔先生の生誕110年の節目の年です。
西暦2013年は岡潔先生のエッセイ集『春宵十話』が刊行されてから50年目の節目です。

最近の記事

FC2カウンター

月別アーカイブ

最近のトラックバック

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる