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新数学人集団(SSS)の時代 ノート32 アイデアをめぐって

SSSとヴェイユとの対話が続きます。

ヴェイユ
アイデアはふっと浮かぶものだ。なぜ浮かんだか、自分にもわからないことが多い。しかし、よいアイデアを見出だすことのできる人が、数学の才能を持った人だ。だが、よいアイデアを少なくとも二つ持った人でないとよい数学者とは言い切れない。なぜなら凡庸な数学者によいアイデアが偶然浮かぶこともあるからだ。たとえばモースがそうで、彼は非常におろかな数学者で、数学もたいして知らないのだが、変分法でひとつのよいアイデアを持っている。しかし二つ以上のよいアイデアが凡庸な者に偶然浮かぶ確率は非常に少なく、ネグリジブル(無視できる)だ。
SSS
あなたの最初のアイデアは?
ヴェイユ
それは私のテーゼ(学位論文)だ。私は先生(名前は記憶不正確故省略。註。アダマールと思います)からモーデル(註。イギリスの数学者)の研究を聞いて、その論文を一晩で読み、ひとつのアイデアを得た。論文を返すときそれを先生に話したが、信用されなかった。私には自信があったので多くの人びとに話したが、だれも信用しなかった。しかしそれに基づいて研究を進めて、だいたいできたころ、どこかでジーゲルに会ったので、彼にそのアイデアを話したら、彼は非常に喜んで大いに激励してくれた。もうだいたい完成していたのだから、彼に激励されなくても結局はできたろうが、とにかく私はそのときたいへんうれしかった。
 その後20年ほどたってまたジーゲルに会ったとき、ジーゲルが言うには、「私(ジーゲル)は君(ヴェイユ)があのアイデアを話したとき、それに従ってうまくいくとは思わなかった。にもかかわらず私は君を激励したのだ。私はいつもそうしている。なぜなら若い人が何かアイデアをもって大問題と取り組んでいるときには、非常な不安があるものなので、だれか名の知れた数学者がそれを激励しないと途中で断念してしまうかもしれないから云々」と。私はこの話にたいへん感心して、それ以後、私自身そうすることにしている。
 ただしリーマン予想だけは例外で、それをやることは思いとどまらせたいと思うが、とにかくも激励されたために、偶然にでもその大問題が解ければ、それは数学のために非常に喜ばしいことで、また、できなくても、それは本人の不幸たるにとどまるから問題はない。数学にとってはもともとのことだ。

 ヴェイユは数学にとってアイデアを持つことの重要さを、自分の体験と合わせてこんなふうに語りました。

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