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新数学人集団(SSS)の時代 ノート28 ボロボロとは何か

ヴェイユとかアルティンとか、戦争が終結して10年目の日本の数学者たちの目には、外国からやってきた数学者たちのひとりひとりがまるで数学の神様のように見えたのかもしれません。SSSの面々にとってもそうだったのかもしれませんが、SSSは臆することなく自由自在に振舞いました。その姿がT.T.先生のような人の目には傍若無人と映じ、さぞかし不快だったことと思います。
 SSSはもっぱら外国の数学者たちに関心を示しました。英訳して配布した『月報』の抜粋というのは次に挙げる6篇の記事です。

1 谷山豊「A.Weilをめぐって」(第1巻、第1号)
2 倉田令二朗「ヒルベルトの現代的意義」(第1巻、第4号)
3 谷山豊「日本の整数論史」(第2巻、第5号)
4 M.M.「数学をやって」(第2巻、第4号)(これはお茶の水女子大学の数学科の学生の投書です。)
5 討論室の記事「少数精鋭主義に反対する」(第3巻、第1号)
6 「シムポジウムについて」(第3巻、第1号)(これも投書です。)

 これらの記事の英訳を作成し、「怪しげな紙」にタイプしたというのですが、「怪しげな紙」というのはいったいどのような紙なのでしょうか。このようなおもしろい言葉遣いや、「ボロボロ数学生」などという言葉を見ていると、なんだかこの記事を書いたのは倉田令二朗先生なのではないかとつい思ってしまうのですが、もちろん確証があるわけではありません。
 ともあれ『月報』の抜粋を外国の数学者たちに配り始めたところ、みな異常な関心を示し始めたということです。だいたいにおいてブルバキとのアナロジーでSSSを理解したようで、アルティンなどは「SSSとはブルバキのようなものか」と問うてきました。そこで「ブルバキのようなこともやるし、ブルバキのやらなかったこともやる」と応じたところ、「Oh! Super Bourbaki !!」と言ったそうです。ブルバキを越えるブルバキ、スーパーブルバキということのようですが、意味はよくわかりません。少数精鋭主義はselected minority principleと訳しましたが、この言葉の意味は最後まで伝わらなかった模様です。 少数精鋭主義の意味はわかりますが、そうするとボロボロというのは少数の精鋭の仲間に入れなかった数学の学生というほどの意味になります。数学は特別の秀才だけがやればよいのだというのが少数精鋭主義で、それに抗議しようとするところにSSSの問題意識がありました。数学に限ったことではなく、日本には途方もなく多くの科学者が途方もなくボロボロになっているという現状認識が根底に控えていて、そのような国はほかにないのであるから、どう翻訳しても意味は伝わるものではないという判断が下されました。
 少数の精鋭はだれが選ぶのだろうかとか、選ばれずにボロボロになった人たちはどうやって生活し、数学を続けていったのだろうかとか、素朴な疑問が次々と生れます。
 スーパーブルバキズムに続いて「delicateな問題」という小見出しが現れます。国際会議の会場は金谷ホテルですが、SSSはどうやらLake-side Hotelに陣取ったようで、この二つのホテルの間をブルバキとSSSが招待したりされたりして行き来していた模様です。日本の偉い先生たちとはまったく無関係に交流をはかっていたのですが、それがSSSにとっての国際会議でした。

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