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新数学人集団(SSS)の時代 ノート23 数学をなぜやるのか(続きの続き)

 思いがけない場面で中谷先生のエピソードが登場しましたが、これを受けて、Cさんは、「これを見ると、数学のような基礎科学の研究自体さえ、必ずしも純粋なものではなく、どんなふうにも使われうる、どんなふうにも悪用されうるものだということに気がつきます」と話を続けました。ここは話の続き具合が少々わかりにくいところです。アメリカでは研究を事務仕事と見て計画的に進めていくという状況観察から、数学研究さえ純粋とは言えないとか、どんなふうにも悪用されうるという判断が導かれるのでしょうか。
 ここはよくわかりませんのでそのままにしておきますが、Cさんはこの点に留意して、「だからこそただ50年先の有効性に安住するのではなく、それが現在持っている役割を考えていかなければならないと思う」という所見を披瀝しました。一理はありますが、なぜここでこのような発言がんされるのか、やはりわかりにくいです。
 それはそれとして摘記を続けます。

・なぜ数学のような迂遠な道を選ぶのか。「好きだから」。これが十分条件になる。あらゆることがここから出発し、あらゆる疑念がここで消滅する。人はそれぞれ好きなことがあり、その好きな道をひとつ選んで、その仕事をしていく中で、それが社会のために役立つような努力をしていきさえすればよいという考え方だ。だが、「好きだ」ということにそのような絶対性を認めることには納得できない。
・原子核研究所の設置を主張した物理学者の意見をつきつめていったところ、結局、物理学者という職業が存在するのだから研究所を作らなければいけないということになってしまったという。「研究したい」という欲望はそれほどまでに根深い、根本的な要求であるにちがいないが、それはまた職業という問題に結びついていることに気づく。
・われわれが「研究したい」という要求は、労働者の「働きたい」という欲望と同じく基本的なものではあるが、他方では、それは「生活の保障」という、いっそう直接的な欲望に媒介されたものになっている。「今まで勉強してきた」とか、「今その職業についている」ということのほかに、自分は数学でなければならないという絶対的な根拠を見出だせる人は何人いるだろう。「人類の幸福のために」という看板をかかげながら、一方では「好きだから」という相対的な基準の上に立って数学の道を選ぶのは矛盾した話ではないか。

 このあたりも文意がつかみにくいのですが、「数学をなぜやるのか」という問いに対して「好きだから」と応じるのは欺瞞ではないかという指摘がなされているように思います。「好きだから」というのは、「数学をなぜやるのか」という大疑問に対する答としてはあまりにも矮小な感じはたしかにあります。「研究したいから」と応じるのも同様の印象があります。

・数学をやることはとにかく必要だ、ということから出発するのではなく、われわれが今、数学をやる意義がどこにあるか、ということをつかむ前提として、あえて破壊的な話をした。必ず数学をやろうという積極性だけは尊重したいと思う。だが、あらゆることをここから出発させるのではなく、数学者が社会の中でどんな役割を持っているか、数学者には何ができて、何をしなければならないのかを考え合っていくことが必要と思う。

 Cさんはこのように論じ、最後に、「それこそが数学を研究する真の原動力となるのではないでしょうか」と結びました。「それこそが」の「それ」は「考え合っていくこと」を指しているように読めますが、そうするとこの議論は結局のところ、結論のないまま終わったことになります。どのように答えても批判をうけることは免れませんし、もともとだれも答えることのできない問いでもありました。みずからに問いかけて、考えること、それ自体に意味があるかもしれないというほどの問いですが、同時にまたこれを考えないようでは数学をする意味も失われてしまいそうに思います。

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