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新数学人集団(SSS)の時代 ノート22 数学をなぜやるのか(続き)

「数学を何故やるのか」の摘記を続けます。

・「筆者らも数学を発展させる仕事は必要であると考える」(「数学と数学者」に見られる言葉)というが、その根拠はどこにあるのだろうか。数学を発展させること自体のもつ積極的意義をさしおいて、「数学が人類の役立つような状態を回復するための努力」が、どうして数学研究の原動力となるのか、わからない。

 この批判は的確に的を射ています。

・「数学と数学者」では国民との連帯性が論じられたが、それはただ数学「者」と国民の連帯という面でしかとらえられていない。数学の発展が国民の生活と無縁であって、国民の生活を豊かにするものではないとするならば、われわれが今持っている研究の条件にどのような根拠を見出しうるだろうか。数学の発展そのものと、国民の生活との関連を不問に附して、その連帯をのぞむことは数学者の身勝手というものではないか。数学者がまた国民の一部であるという同一性のみに注目して安易に両者を接着するのは一面的と言われるのではないか。

 以下、しばらく数学研究と人類と国民の幸福との関係をめぐって、込み入った議論が続きます。これを要するに、「数学と数学者」では「数学の発展が人類の幸福に役立てられるような努力をなすべきである」という主張がなされていると指摘して、それに疑念を表明しているように読み取れます。そうしてこの疑念を踏まえて、中谷宇吉郎先生の発言が引用されました。中谷先生はアメリカに出かけたおりの体験を語っています。

・中谷―私が向うへ行ったときに、向うの所長がおもしろいことを言った。アメリカの研究所は、このごろ非常に計画的に研究をする傾向がある。研究を全部研究事務としてやる。一年たったらこれだけの結果が出る、ということをはじめから予定している。こういう傾向がひどくなると、アメリカの研究というものは将来だめになる。だからおまえを呼んだのはアカデミック・アトモスフィア、学的雰囲気を作るためなのだから、そのつもりでやってくれ。従って研究の目的などは何も言わないし、題目などもかってに選んでくれ。要するにおまえにはここの研究所にアカデミック・アトモスフィアを植えつけることだけが任務なんだと言いましてね。
―それでアメリカはどういう利益があるんですか。
中谷 それは、アメリカの研究所に今までと少し違った雰囲気を入れることができたら、それはたいへんな利益になりましょう。もしできたらね。

 中谷先生の伝えるところによると、アメリカの研究は事務仕事になっているとのこと。アメリカの研究所の所長がそういう話をして、このままではアメリカに将来はないと嘆いていたというのです。60年、70年の昔を伝えるエピソードですが、まるで昨今の日本の研究状況がそのまま語られているかのような錯覚を覚えます。

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