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新数学人集団(SSS)の時代 ノート17 投書より(続)

「月報」第2巻、第1号には発行日が記入されていませんが、第2巻、第5号の末尾に「第2巻総目次」が掲載されていて、それを見ると、第2巻、第1号は「1953年7月」に発行されたことがわかります。7月の何日なのか、そこまではわかりません。
 それと、これは前にも書きましたが、第2巻、第2号は1954年10月15日に発行されました。前号から1年3箇月後のことで、これほど間があいていたとはうっかりして気づきませんでした。「月報」というくらいですから、本当は毎月発行する考えだったのであろうと思われますが、財政上の問題もありますし、原稿を集めるのもたいへんな苦労があることでしょうし、それに、小さな字がびっしりと敷き詰められたガリ版刷りの冊子ですので、相当の情熱を注がなければとても継続することはできません。

 Tさんの投書を続けます。

・類体論の読者はマラルメ(フランスの詩人)の読者の何千分の一かもしれあい。独特な記号のもとに、著者にしか理解できない「詩」をものしようとして煩雑な計算、記号的形式的推論により試作というよりは大量生産の名にふさわしい論文が山積みしようと、浮世の俗物のことなど顧慮する必要がどこにあるだろう。その俗物どものあなた方に対してはきわめて寛容である。実際、あなた方の生活はすばらしい。合理主義的啓蒙とか、資本主義の矛盾とか喚きたてて、現在の秩序を乱し、社会を転覆しかねない不逞の輩の尻馬に乗るおそれもなく、おまけに、求めようともせず、考えてもみなかった何かすばらしい名誉を、人間精神に与えてくれるかもしれないのだから。

 「数学は何のためか」と問うよりもむしろ、数学研究者を揶揄して、無害無益の無用の長物と言われているかのような印象があります。マラルメ詩集をひもとく人も多いとは言えないでしょうが、類体論の書物を読む人となるとさらにその何千分の一。数学の研究などは自己満足にすぎないではないかということでしょうか。

・自分の生きていたしるしを世の中に残すために、死の床にあって、私はこれだけのことをしてきた、私の生活は無意味ではなかったこと、満足の中に目を閉じられるように、数学の殿堂に自分の鑿(のみ)の跡を残そうとする人もいる。山小屋の壁に落書きをし、木の幹に自分の名を彫りつけるのも同じ心理。死の床にあって、守銭奴は子孫に遺しうる金高に満足の笑みを浮かべ、誠司かは自分の当選回数を思い浮かべ、将軍は自分の灰にした町の数を思い浮かべる。ある人は自分の書き写した経典の山を、などなど、何とすばらしい「しるし」が世に遺ることだろう。人間の事業がすべてむなしいというのではないが、それに「価値」を与えるのは何か別の原則によるのだ。
・何も死の床に限るわけではない。私はこんなに頭がいいんだ。私はこんなに能力がある。私はこんなにいろんなことをした。それは私が前に証明しました。それよりこのほうが簡単な証明だ。これは私の発見した最大の定理だ。私はどんな論文でも理解できる。私はこれだけ本を書いた。私は学位を6個取った。私は何とか大学の教授だ。私は大物だ。・・・別に数学でなくても・・・私はこんなに将棋が強い。私は柔道6段だ。私はこんなにお酒が飲める。私は金庫破りの名人だ。泥棒の親分だ。私は神の使いだ。私は神様だ!
 わかった、わかった、わかった。ただ、よくわからないこともある。なんでも証明でしるあなたにとって、あなたの能力の証明だけはむずかしいらしく、その証明にあなたの一生を要すると思っているらしいのはなぜなのだろう。

 「数学は何のためか」という問いが提示され、いろいろな答が試みられたものの、結局、答のないままに終りました。
だれにも答えることのできない難問を提示して、「月報」の読者にあえて議論をふっかけたような印象もありますが、案の定、いくつかの感想が寄せられて小さな誌上討論会のような雰囲気が生れました。

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