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新数学人集団(SSS)の時代 ノート11 アンドレ・ヴェイユを論じる

遠山先生は1953年には東京工業大学にお勤めでした。その遠山先生を囲んで、東大の数学科の学生たちが座談会をもったということの背景にはどのような事情が控えていたのでしょうか。興味の深い出来事ですが、考察するべき課題のひとつとして念頭に置きたいと思います。前回、岩澤、矢野両先生が新数学人集団にとってのガストン・ジュリアに相当するのではないかと書きましたが、実際にはこのお二人は日本にいなかったのですから新数学人集団とは関係がありません。遠山線の著作の読書会と、遠山先生を囲む座談会が契機となって発足したのですから、新数学人集団におけるガストン・ジュリアはやはり遠山先生と見るべきであろうと思いあたりました。
 新数学人集団の創立メンバーを確定することも基本的な課題ですが、谷山さんは動かすことができません。谷山さんと同期で同じ1953年に卒業した杉浦光夫先生も創立メンバーのひとりです。団長の清水先生と副団長の倉田先生も創立メンバー。ほかに斎藤正彦先生、渡辺毅先生などのお名前が念頭に浮かびますが、正確な情報が手に入るまでは断言を避けることにします。
 谷山さんは早い時期に高木先生の『近世数学史談』を愛読し、大いに影響を受けたと言われていますが、それと関係があるのかどうか、アンドレ・ヴェイユに寄せる関心も並々ならぬものがあった模様です。1952年11月12日には「数学方法論研究会(仮称)」の第7回例会で「ヴェイユ」という題目で話をしています。この時期の谷山さんは東大の3年生ですが、略年譜を見ると、前年の1951年にヴェイユの三部作を読み、1952年には玉河ゼミでヴェイユの学位論文を読んでいます。このような体験を踏まえてヴェイユの話を試みたのであろうと思われます。その話の内容はわかりませんが、「月報」創刊号に「T」という署名で掲載された谷山さんのエッセイ「A.Weilをめぐって」を見ると、ヴェイユに対するいくぶん複雑な感慨が率直に述べられています。
 新数学人集団に関する諸事実の収集をめざすという当面の方針から離れてしまいますが、概要を書き留めておきたいと思います。以下、谷山さんの言葉の要約です。

・ヴェイユはおそらく世界第一の現役数学者であろう。ただし、ジーゲルは除く。
・ヴェイユは視野が広く、見識が高い。それは「数学の将来」や1950年の国際数学者会議での講演を見ればわかる。
・あまりにもだいたんに推測し、はったりではないかと思われるところもないわけではないが、凡庸な目をもって天才の思想を云々するのは危険である。
・ヴェイユはブルバキの中心人物である。フランスにはあまりにも強固な解析学の伝統があった。ブルバキはそれに反抗して生れたが、外見がモダニズムだからといって、かれらのもつ古典の素養の深さを見落としてはならない。
・かつて数学とは抽象化であり、公理系であり、無矛盾の体系であると言われた時代があった。しかし30年代の陶酔から醒めた「現代」数学はこの形式的規定をはなはだ不十分なものと感じている。
・無矛盾らしく見える抽象的体系の中で「意味」のあるものは何か。それは、古典的な諸結果を抽象し、統一し、見通しよく再編成しうるものでなければならない。その構成と展開。それが現代数学の任務であると言われる。しかも、ひとつの抽象的基盤の上のみに閉じこもった分野はスコラ化する危険にさらされる。アメリカの一部の学派にはすでにその徴候が見られる。ブルバキの仲間には伝統につちかわれた見識があり、それによってこの危険が克服されている。
・この意味においてヴェイユは現代数学を代表する人物である。そこにヴェイユの秘密があり、同時に限界もまたそこに見出だされる。

 まだ続きますが、谷山さんは30年代の抽象数学と「現代数学」を識別し、現代数学というのはヴェイユのやっている数学のことと理解しているように思います。ヴェイユの「秘密」と「限界」については、もう少し先まで読み進める必要があります。

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