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数学史研究の回想50 3次剰余と4次剰余の理論

ガウスは平方剰余相互法則の8通りもの証明(高次冪剰余の理論に基づく証明が二つあり、別の証明ですが、本質は同じと見ることも可能ですので、それらを同一視すると7通りになります)を発見しましたが、そこまで執着したのはなぜかという疑問に対して、ガウスは平方剰余相互法則のいろいろな証明を報告する諸論文のあちこちでみずから詳細に理由を語りました。それについてはこれまでのところで見たとおりですが、これに関連してもう少し紹介しておきたいことがあります。
 まず、これは論文「ある種の特異級数の和」に記されていることなのですが、ガウスはガウスの和の数値決定を根拠にした平方剰余相互法則の証明を書き記した後に、「後ほど、まったく異なる原理に基づく他の二つの証明を再度、説明する予定である」と言い添えました。この論文が学術誌「ゲッチンゲン王立学術協会新報告集1」に掲載されたのは1811年ですが、3年前の1808年8月24日にゲッチンゲンの王立学術協会で報告されています。ここで予告された「他の二つの証明」は論文「平方剰余の理論における基本定理の新しい証明と拡張」において報告されました。この論文は1817年2月10日にゲッチンゲン王立学術協会で報告され、それから1828年の学術誌「ゲッチンゲン王立学術協会新報告集4」に掲載されました。掲載誌の刊行年を見ると、前論文から7年目のことになりますが、学術協会で報告された日付に着目すると、1808年から1817年にいたるまで、9年の歳月が流れています。
 そこでガウスは「平方剰余の理論における基本定理の新しい証明と拡張」の序文において、「すでに9年前に約束しておいた新しい証明を、今になってはじめて公表することにしたのには、別の理由もあった」と言い、3次剰余と4次剰余の理論を語りました。

≪1805年に3次剰余および4次剰余の理論の研究を始めたとき、これははるかに困難なテーマなのだが、私はかつて平方剰余の理論において陥ったのとほとんど同じ運命に遭遇したのである。もう少し詳しく言うと、この問題を完全に処理し、平方剰余に関する諸定理との不思議な類似が偏在する諸定理は、適切な仕方で追い求めるや否や、帰納的な道筋により難なく見つかった。これに対し、それらの定理のあらゆる面から見て完全な証明に達しようとする試みは、長い間、ことごとくむなしかった。この事態が原動力になって、相異なる多くの方法のうちのどれかしらは、同じ仲間のテーマの吟味に寄与しうるのではないかという希望を抱きつつ、平方剰余に関する既知の証明になお別の証明を付け加えようとして、私は大いに骨を折ったのである。≫

 ガウスのねらいは3次と4次の冪剰余の理論にあり、そこでもまた基本定理、すなわち相互法則を発見しようと望んだのですが、さまざまな定理は難なく見つかったものの証明するにはいたらないという、アリトメチカに特有の状況にまたしても直面しました。平方剰余相互法則のいろいろな証明を追い求めた理由が、ここにもまた現れています。ガウスはそれらの証明の中に、3次と4次の相互法則の証明にもそのまま適用できる原理に基づいているものを見つけたいと願ったのでした。
 平方剰余相互法則のいろいろな証明を探索した理由はこれで二つになりました。ガウス自身の肉声が聞こえてくるという、古典読解の醍醐味をしみじみと味わうことができて、感慨もまたひとしおです。

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コメント

[C36594]

こんにちは!
私、松川というものです。
岡潔さんのことを調べていて、オイラー研究所所長様のサイトまで辿り着きました。
それで、いきなりぶしつけで失礼かと思われますがひとつ質問をさせていただけないでしょうか。

筑波山にあると思われる梅田開拓筵というのをご存知でしょうか。
胡蘭成さんもお世話になっていたらしいところなのですが、そこへ行ってみたいのです。
まことにいきなりで失礼かと存じますが、もしも所在地がわかるようでしたら教えていただけないでしょうか。
よろしくお願いします。

[C36593] 楕円関数と剰余法則の関連

はじめまして。
常々拝見させていただいております。

数学を発見者の視点で記述される論考を
しばしば参考にさせていただいます。

さて今回の記事についてですが
ガウスは楕円関数のほうから3乗剰余の相互法則など
について示唆をうけなかったのだろうか。
アイゼンシュタインの様な思考はできなかったのだろうか、
と不思議におもっています。

sn関数にk=sin(π/12)をいれたときK'=i(3)^(1/2)K
になることを誰が発見したかがkeyなきがしますが、
どう考えたらよいのでしょうか。

お考えをお聞かせいただけましたら幸いです。
  • 2015-12-17 21:36
  • rai
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