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リーマンを語る 266. ルジャンドルとヤコビの往復書簡より その68

 「はしご」の話の続き。ルジャンドルがヤコビの発見をどれほど喜んだことか、喜びに満ちた声が生き生きと伝わってきます。

〈モジュールの作る新しい「はしご」は、与えられたモジュールから、単に平方根と三乗根を開くだけで導き出すことができた。この新しい「はしご」は古い「はしご」を使って得られるものよりもはるかに迅速な近似をもたらした。最後に、これらの二つの「はしご」を組み合わせることにより、第一種関数の変換を驚くべき仕方で乗じることができた.それを見て、著者はある種の格子模様が作られているような感じがした。それは2次元の方向に無限に広がり、そのすべての格子は、ある同一の関数が受け入れるさまざまな変換で満たされていた。それゆえ、楕円関数の理論のこの領域において、さらに遠方に歩をのばすことができるとは、とうてい思えなかったのである。〉

〈ところが、ある若い幾何学者、ケーニヒスベルクのヤコビ氏は、1827年1月にようやく出版されたばかりの『概論』を知らなかったのだが、独自の研究により、先ほど言及した数3に関連する第二の「はしご」ばかりか、数5に関連する第三の「はしご」をも発見することに成功した。しかも彼は、提示されたあらゆる奇数に対して類似の「はしご」が存在するにちがいないという確信を、すでに手にしていたのである。〉

〈この美しい解析学の発見の告知はシューマッハーの天文学誌の第123号において行われた。そこには数3と5に関わる「はしご」の作成についての二つの個別の定理と、さらに、任意の奇数に適用される「はしご」を作るためのひとつの一般定理が見いだされる。〉

〈この一般定理の証明は少し後に同じ雑誌の第127号において発表された。その証明は著者の鋭敏さの大きさと、彼がこのテーマの困難を乗り越えるために使用した方法の多産さをすっかり明るみに出した。この定理はあらゆる奇数に対して確立されたのであるから、そこから、各々の整数もしくは有理数に対し、モジュールの個別の「はしご」を作ることができるという結論を下すのは容易である。その「はしご」は同一の第一種関数の無限に多くの変換を引き起こし、それらの変換はすべて代数的に定められる。〉

 ルジャンドルはヤコビの発見を予想することはできませんでしたが、意味するところを理解することはできました。このあたりの消息がアーベルの場合と異なるところで、ルジャンドルはアーベルの「パリの論文」にまったく関心を示しませんでした。「超越的なもの」の世界において円関数と対数関数の次に楕円関数を切り取って考察を加えようというのがルジャンドルの関心事なのですから、完全に一般的な代数関数の積分を考えて、しかもそこに加法定理が存在することを示そうとするアーベルの論文は、あまりにも隔絶していたのではないかと思います。
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