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数学史研究の回想66 円周等分方程式論の回顧(ガウスからアーベルへ)

前回の記事から一箇月ほど間があいてしまいましたので、この機会に原典を読むことの意味合いについて、思いつくままに書き留めておきたいと思います。
 アーベルの数学研究の二本の柱は代数方程式論と楕円関数論ですが、アーベルが最初に取り組んだのは代数方程式論でした。次数が4を超える一般の代数方程式は代数的に解くことはできないという「不可能の証明」に成功したのが最初の大きな成果ですが、代数方程式論の研究はこれで終ったのではなく、「不可能の証明」は新たな方向に向うための出発点になりました。5次以上の一般の高次方程式は代数的に可解ではないとしても、次数とは無関係に、あるいは、もっと正確に言えば、次数がどれほど高くとも、代数的に解ける方程式は存在します。その大きな一例が円周等分方程式で、ガウスがこれを示しました。
 アーベルはガウスの著作『アリトメチカ研究』を見てガウスの円周等分方程式論を知り、代数的可解性を左右する要因が「根の相互関係」であることを理解しました。アーベルに及ぼされたガウスの影響がここに現れています。
話がもどりますが、ガウスの影響は「不可能の証明」にも及んでいます。実際、アーベルは当初は5次方程式の代数的可解性を信じていて、証明に成功したと思って論文を書いたこともあったのですが、ガウスの『アリトメチカ研究』を見て影響を受けて考えを変えました。ガウスは証明こそ書かなかったものの、5次方程式の代数的可解性をはっきりと退けて、そんなことがありうるはずがないという主旨の文言を『アリトメチカ研究』の中に明記していました。
 円周等分方程式が次数の高さに関係なく代数的に解ける秘密は「根の相互関係」にあるとして、その相互関係を見るための手順が確立されなければ何事も起りませんが、円周等分方程式の根は複素指数関数の特殊値で表されますから、指数関数の性質に基づいて根の相互関係がはっきりと浮かび上がります。後年、クロネッカーがアーベル方程式と読んだり単純アーベル方程式と読んだりしてなかなか呼称が確定しなかったのですが、巡回方程式と呼ぶのが一番ふさわしいと思います。根を表示するのに使われる関数は実関数ではなく、複素変数の関数の関数である点も重要なところです。ガウスの目にはこれらのすべてがいっぺんにパノラマのように見えたのであろうと思われますが、ガウスが見たのと同じ光景をアーベルもまた見たのでした。

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