オイラーのいう変化量と定量の概念は必ずしも明快に理解されるとは言えませんが、このような概念規定へとオイラーを誘うにいたったもっとも根本的な要因は、おそらくニュートンの力学であったろうと思います。変化量と定量というのは、惑星(動く星)と恒星(動かない星)に典型例が見られるように、「動くもの」と「動かないもの」という物理的自然に見られる力学的現象から抽出された数学的概念です。ライプニッツが提示した「万能の接線法」には変化量も定量も見られないことも、注目に値する事実です。
変化量と定量の概念規定に続いて、オイラーは関数の概念を導入します。
《ある変化量の関数というのは,その変化量といくつかの数,すなわち定量を用いて何らかの仕方で組み立てられた解析的表示式のことをいう.》
これが、近代数学史上一番はじめに記述された関数の概念です。ここで当然のことながら問題になるのは、「解析的表示式」の一語の指し示すものは何か、ということですが、この問いに対するオイラーの答はなく、ただいくつかの具体例のみが示されています。
《それ故,もしある解析的表示式において,その表示式を構成する量は,変化量zは別にするとすべて定量であるとするなら,そのような解析的表示式はどれもzの関数である.たとえば,
a+3 z , a z-4 z z , a z+b √(a a-z z) , c^z
などはzの関数であることになる.》
オイラーはこのように語った後にすぐ、
《それ故,ある変化量の関数はそれ自身,変化量である.》
と続けます。解析的表示式の実体の外縁が不明瞭で、明確さを欠くきらいは確かにあるとしても、不都合が起らない限り目一杯広く受け取ればいいのですから、問題になることは実際には何もなく、厳密ではないという主旨の批評はあたりません。肝心なのはむしろ関数概念の所在地を理解することで、「ある変化量の関数はそれ自身,変化量である」というオイラーの言葉にそのまま追随すれば諒解されるように、この一番はじめの関数概念は「変化量と定量の作る世界」において現れたのです。既知の変化量と定量を元手にして、次々と新たな変化量を作り出すシステムこそが、解析的表示式としての関数概念の真髄です。指数量、対数量、それに円から生じる超越量などは、既知の変化量の具体例として受けとめるべきであり、解析的表示式の概念が打ち出されてもなお依然として変化量のままなのであり、この段階ではまだ指数関数、対数関数、三角関数にはなっていないと見なければなりません。