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著作の完成をめざして12 デカルト『幾何学』に現れた線のいろいろ(2)

『幾何学』第2巻から線のいろいろを拾ってみます。

曲線=lignes courbes
平面的=plans 直線と円を描くだけで作図可能
立体的=solides 円錐曲線が必要
曲線的=lineaires 訳文「より複雑な他の曲線を用いなければ作図しえない」 
この訳文における「曲線」の原語はquelque autre ligne plus compose’es。すなわち、原語は「線」です。

デカルトの言葉
〈幾何学の問題のうち、或るものは平面的、或るものは立体的、或るものは曲線的であることは古代人は十分気づいていた。〉

幾何学的=原語はGeometriques。「幾何学的な線」
機械的=原語はMechaniques。「機械的な線」

デカルトの言葉
〈私がここに導入しようとしているあらゆる曲線を描くためには、2本またはそれ以上の線が互いに他によって動かされ、それらの交点が他の線を作り出す、ということを仮定するだけでよいのであって、この仮定が古代人のものよりむずかしいとは私には思えない。〉
〈古代人は円錐曲線を完全には彼らの幾何学に受けいれなかった。〉
〈幾何学とは的確で精密なもの、機械的とはそうではないもの〉
〈古代の幾何学者たちが円錐曲線より複雑な線を受けいれなかったのは、おそらく次の事情によるのであろう。彼らが考えたこの種の最初の線はたまたま螺旋、円積線、そのほか類似のものであったが、これらは精密に測りうるいかなる関係ももたない別々のふたつの運動によって描かれると想像されるものであるから、まさしく機械的な線に属し、私がここの受けいれるべきであると考えている線の範囲に入らない。〉

「曲線的な線」は作図機械を工夫すれば描くことができます。実際、ギリシアではいろいろな機会が考案されました。そこで、「曲線的な線」は「機械的な線」とも呼ばれることになりました。デカルトはこの古代の分類法に不満があったようで、ギリシアで「機械的な曲線」と呼ばれていた曲線の中に分け入って、さらに分類をめざした模様です。
 ギリシアの「機械的曲線」の中には正真正銘、デカルトの目にも機械的としか見えない曲線もあります。たとえば螺旋や円積線がそうで、それらは「精密に測りうるいかなる関係ももたない別々のふたつの運動によって描かれると想像される」ものであるから、まさしく機械的であるというのがデカルトの所見です。そこでデカルトはこれらの曲線は考察の対象から除外しました。
 これに対し、シソイドやコンコイドはギリシアの数学では機械的とされましたが、デカルトは考察の対象として受け入れようとしています。受け入れたり、受け入れなかったり、区分けの基準はどこにあったのかというと、デカルトが提案した「幾何学的計算(calcul Geometrique)」の適用が可能か否かというあたりが分岐点でした。
 デカルトが「幾何学的」と呼んだ曲線をライプニッツは「代数的」と呼ぶことを提案しました。

ライプニッツの言葉
1686年7月14日付のアルノーへの手紙より
〈それゆえ私は、デカルト氏によって受け入れられた曲線を代数的Algebraicasと呼びます。なぜならある次数の代数方程式に属するからです。そしてその他のものを超越的Transcendentesと呼び、それらを算法に従わせ、その作図も点か運動を用いて示します。そして、敢えていうならば、そうすることによってヘラクレスの柱を越えて解析を促進しようと考えています。〉(『ライプニッツ著作集』巻2、309頁)

 このライプニッツの提案は今も生きています。螺旋と円積線はライプニッツの用語でいう超越的な曲線ですが、シソイドとコンコイドは代数的な曲線で、それらはデカルトの考察の範疇に入ります。
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著作の完成をめざして11 デカルト『幾何学』に現れた線のいろいろ(1)

少し前にデカルトの『幾何学』からいろいろな名前の線を拾いましたが、もう一度、試みてみたいと思います。

第1巻
直線=lignes droits
線=lignes
円錐曲線=sections coniques
平面的な問題=problefmes plans
未知の線=ligne inconnue
曲線=ligne courbe

「線」「直線」「曲線」が混在しています。

立体軌跡=solidus locus (lieu solide)
 デカルトはパップスの『数学集録』のラテン語訳から引用していますが、その引用文の中で使われている言葉で、円錐曲線のことです。
 原先生の註記によると、ギリシア数学において円以外の円錐曲線はtopoi stereoiと呼ばれていて、これを訳して「立体軌跡」という言葉ができたのだそうです。註記を続けると、ギリシアでは直線と円は平面上に作図しうることが要請され、平面軌跡topoi epipedoi(loci plani, lieux plans)と呼ばれたとのこと。これに反し、円を除く円錐曲線の作図には円柱や円錐が必要と考えられていて、そのためにそれらの曲線は立体軌跡と呼ばれたということです。

著作の完成をめざして10 曲線の理論と求積法

今日の微積分でも面積を求めることは大きなテーマです。今日の流儀にしたがって関数y=f(x)を考えて、状況を簡明にするためにf(x)>0として、この関数のグラフと二本の直線x=a、x=b (a 架空の曲線を心に描き、微分方程式dy=f(x)dxに逆接線法を適用して曲線の形を求めると、二つの変化量xとyの関係式が判明します。その関係式を観察すると、x=aに対応するyの値Aとx=bに対応するyの値Bが定まりますが、その差A-Bを作ると、それが求める面積です。関数値の差がどうして面積になるのかというと、その根拠は出発点に設定した微分方程式dy=f(x)dxの形にあります。関数値の差A-Bは「無限小量f(x)dxをx=aからx=bまで寄せ集めた量」の大きさを表しているからです。
 曲線を知るための微分計算の応用として極大極小問題が解けますが、逆接線法を応用すると求積法が確立されます。実におもしろい光景です。

著作の完成をめざして9 逆接線法から求積法へ

逆接線法というのは、dxとdyの関係式が提示されたとき、(dx、dyを含まない)xとyの関係式を導出する方法ですが、計算の実体は微分計算の逆演算です。ライプニッツはその計算のことを積分計算と呼んでいました。
 求積法は逆接線法の応用例です。微分計算と積分計算の背景には「曲線の世界」が広がっていて、dxとdyの関係式もxとyの関係式も「曲線の世界」の舞台の上に成立します。ですが、曲線の世界という舞台が消失した状態で、何らかの仕方で真っ先にdxとdyの関係式が与えられたとするならば、逆接線法の計算規則を適用することにより、その関係式は逆に曲線を生成するのではないでしょうか。逆接線法が求積法を産み出す道筋がここにあります。

著作の完成をめざして8 逆接線法と求積法

微積分は「曲線の理論」として始まりました。デカルト、フェルマ、ライプニッツ、ベルヌーイ兄弟と、曲線を知りたいという情熱が継承されています。曲線を知るということの鍵をにぎるのは接線を引くことでした。法線を引くことと言っても同じです。デカルトの『幾何学』にはこの課題が幾度となく語られていますから、そこに疑問の余地はないのですが、では接線や法線を引くことを通じてs曲線の何を知りたかったのかというと、実はよくわかりません。このあたりに謎が残ります。
 積分は逆接線法として認識されましたから、これもまた曲線の理論です。積分の源泉というといつでも求積法が語られますが、積分の起源はあくまでも逆接線法であり、求積法は逆接線法から派生した応用例のようなものではないかと思います。微積分の基本定理に言及しなければなりませんので、逆接線法と求積法の関係を明らかにするのは重要な課題です。

著作の完成をめざして7 線のいろいろ

デカルトの『幾何学』のテーマは曲線の理論ですが、いろいろな名前の「線」が出てきます。原亨吉先生の翻訳を参照しているのですが、概観すると下記の通りです。

   線
平面的な線
立体的な線
超立体的な線
曲線的な線
幾何学的な線
機械的な線

原語はフランス語です。どういう言葉をどのように訳出したのか、気に掛かりますが、一見して苦心の翻訳という印象があります。

著作の完成をめざして6 歴史ということ

ディオファントス『アリトメチカ』とフェルマの数論。ユークリッド『原論』における正三角形、正五角形のガウスの円周等分方程式論。数学的思索の課題は歴史的に生成され、値打ちもまた歴史的な視点から行われます。

『ユークリッド原論』
訳・解説:中村幸四郎、寺阪英孝、伊東俊太郎、池田美恵
共立出版、1971年)
巻頭に配置されているのは23個の「定義」、5個の「公準(要請)」、9個の「公理(共通概念)」。

定義1 点とは部分をもたないものである。
公準(要請)1 任意の点から任意の点へ直線をひくこと
公準(要請)3 有限直線を連続して一直線に延長すること
公準(要請)3 任意の点と距離(半径)とをもって円を描くこと

直線を引くには定規を使い、円を描くにはコンパスを使います。

著作の完成をめざして5 デカルトの『幾何学』

デカルト『幾何学』は三つの巻で構成されています。
巻1 円と直線だけを用いて作図しうる問題について
巻2 曲線の性質について
巻3 立体的またはそれ以上の問題の作図について

読めば読むほどおもしろい作品です。微積分は「曲線の理論」としてはじまったことを、もっと強調するべきであろうと思います。

著作の完成をめざして4 ペルの方程式

ペルの方程式の解は非常に大きくなることがあります。言い換えると、小さな数の範囲では解が見つからないペル方程式が存在します。

x^2-211y^2=1の一番簡単な解
   x=278354373650
   y=19162705353

x^2-991y^2=1の一番簡単な解
   x=37951 64009 06811 93063 80148 96080
   y=1205 57357 90331 35944 74425 38767

著作の完成をめざして3 フェルマの「欄外ノート」より

フェルマの数論の話はフェルマの諸命題を拾うことから始まります。典拠は「欄外ノート」と書簡集で、どちらもフェルマの全集に収録されています。

「欄外ノート」第7項目 〈直角三角形の基本定理〉
「欄外ノート」第18項目 〈多角数に関するフェルマの定理〉
「欄外ノート」第33項目 〈二つの4乗数の和は平方数ではありえない。〉
「欄外ノート」第45項目 〈直角三角形の面積は平方数ではありえない。〉
「欄外ノート」第44項目 〈三辺の長さが自然数で表される直角三角形であって、斜辺の長さ、および直角をはさむ二辺の長さの和がともに平方数であるものを求める。〉(フェルマはこの問題の解答を書い留めています。)

これらの五つの命題のそれぞれに、ディオファントスもしくはバシェの言葉が伴っています。

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オイラー研究所の所長です

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