数-1+2iとその随伴数に続いて,ガウスは数-3と+3を取り上げて帰納的考察を行っています.それによると,どちらの数も,法
+3+2i, +3-2i, -1+6i, -1-6i, -7, -5+6i, -5-6i, -3+8i, -3-8i, +9+4i, +9-4i, ...
の平方剰余であり,法
-1+2i, -1-2i, +1+4i, +1-4i, -5+2i, -5-2i, +5+4i, +5-4i,
+7+2i, +7-2i, +5+8i, +5-8i, +5-8i, ...
の平方非剰余であることがわかります.そこで,前にそうしたように数と法を入れ換えて,数3を法として取ると,前者の数は法3に関して四つの数+1, -1, +i, -iのいずれかと合同であることがわかります.しかもこれらの数は3の平方剰余です.後者の数についてはどうかというと,四つの数+1+i, +1-i, -1+i, -1-iのいずれかと合同であり,しかもこれらの数は法3の平方非剰余です.上に挙げたいろいろな法はどれも,aは奇数,bは偶数としてa+biという形の素数ですが,このような数と数-3(および+3)との関係は,一方が他方の平方剰余になったり平方非剰余になったりするという点において同一です.
この帰納的考察を一般化すると,ガウス整数域における平方剰余の理論の基本定理の形が予想されます.
《a+bi, A+Biは,a, Aは奇数,b, Bは偶数となる素数としよう.このとき,どちらの数も他方の数の平方剰余になるか,あるいは,どちらの数も他方の数の平方非剰余になるかのいずれかである.》
ガウスはこれを「きわめて美しい相互法則」と呼んでいます.証明は与えられていませんが,大きな困難を伴うこと,「四次剰余の全理論を内包する一般定理」,すなわち四次剰余相互法則の特別の場合にすぎないことが言い添えられています.
そこで四次剰余の理論に移ることになりますが,その前に「相互法則」という一語に着目したいと思います.ガウスはD.A.でも引き続く諸論文でも相互法則をいう言葉を使ったことはなく,平方剰余相互法則を指してつねに「平方剰余の理論における基本定理」と呼んでいました.相互法則という呼称はルジャンドルの創意です.ところが四次剰余の第二論文にいたり,ガウスはさりげなく相互法則という言葉を採用しました.ルジャンドルのひそかな影響がはっきりとうかがえる情景です.