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(ガウス121)ガウスの数論の回想(3)

ガウスの数論(数論ばかりではありませんが)の数学的構造に目を向けると,何よりも先に見る者の目を奪うのは「数域の拡大」というアイデアです.ガウスは四次剰余相互法則というものの十全の姿を見るには数域を拡大しなければならないことを確信し,ガウス整数域を舞台に据えたのですが,素朴な帰納的探索をはるかに越える事態ですし,どうしてこのようなアイデアを把握することができたのか,数学的創造とはこのようなものかと,考えるほどに不思議さはつのるばかりです.近代数学史の流れを顧みて他に類例を求めると,対数の無限多価性を認識したオイラーの洞察や,多変数関数論の研究で上空移行の原理を発見した岡潔先生など,ごくわずかな事例が念頭に浮かびます.イデアルの理論を創造したクンマー,類体論のアイデアを構想したヒルベルト,一変数の複素関数論にリーマン面のアイデアを提案したリーマンなども,優に仲間に加わる資格がありそうです.岡潔先生は多変数関数論の領域にクンマーのイデアルの概念を移植し,不定域イデアルの理論を創始しましたが,これもまた「数域の拡大」というガウスのアイデアに匹敵します.これらはみな数学という建築物の根柢を支える役割を担っています.
 ガウスはたったひとりで長年にわたって孤独な探究を継続し,四次剰余相互法則を提示する地点に到達しましたが,証明は公表されませんでした.それと,ガウスは四次剰余相互法則のみならず,任意次数の冪剰余相互法則の存在を確信していましたが,ごくわずかに示唆しただけに留まりました.そんなふうで,ガウスの数論は実際には未完成に終ったのですが,まさしくそれゆえに相次いで継承者が現れるという成り行きになりました.アーベル,ヤコビ,アイゼンシュタイン,ディリクレ,クンマー,クロネッカー,それにヒルベルトなど,19世紀の数学史を彩る偉大な数学者たちの名が次々と心に浮かびます.代数的整数論と言われる大きな理論がここから生れました.楕円関数論との密接な関連も興味が深く,ガウスの数論に続いて語るべきテーマですが,少々準備期間をおくことにして,これからしばらくもうひとつのテーマに移り,「解析概論の系譜」について語りたいと思います.
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(ガウス120)ガウスの数論の回想(2)

ガウスの数論の全体像を顧みてあらためて心を打たれることが,もうひとつあります.それは,四次剰余相互法則の証明がついに公表にいたらなかったという一事です.ガウスは実際には証明を手にしていたようで,アイゼンシュタインからリーマンを経てシェリングに伝えられた証言が記録されていますし,遺稿の中に証明の道筋を書き留めた記事が見つかったことも,この推定を補強しています.それにもかかわらず公表しなかったのは、何かしらよほどの事情があったのではないかという想像にかられます。
 もう少し精密に検討すると,ガウスは四次剰余相互法則の本体こそ,証明を公にしなかったものの,二つの補充法則については二篇の論文の中で証明を記述しました.第一論文ではもっぱら補充法則が取り上げられましたが,この段階ではまだ数域は有理数域に留まっていました.第二論文で数域が拡大されてガウス数域に移行すると,今度はガウス数域における(四次剰余相互法則ではなくて)平方剰余相互法則の二つの補充法則と,(平方剰余相互法則ではなくて)四次剰余相互法則の第二補充法則が表明され,しかも証明も与えられました.
 ルジャンドルとの関連も刮目に値します.ガウスはD.A.の中で特にページをさいてルジャンドルによる平方剰余相互法則の証明を非常に精密に検討し,不備を指摘しましたが,そのガウスは同時にルジャンドルの影響を受けているのではないかと思われる徴候が目に映じます.そんな徴候をこれまでに二つ例示しました.ひとつはプライマリーという概念を提示したこと,もうひとつは四次剰余の理論において,たった一ケ所ではありますが,「相互法則」という用語を採用したことでした.さらにもうひとつ,第三の例もあります.これはガウス全集の巻3に収録されている断片に記されている簡単なメモのですが,二つの異なる正の奇素数p, qに対し,qはpの平方剰余であることを
  (q/p)=+1
と表し,qはpの平方非剰余であることを
  (q/p)=-1
と表すというのです.これはルジャンドルが提案した記号にほかなりません.D.A.ではこれらはそれぞれqRp, qNpという記号で表されていましたし,D.A.以後に公表された諸論文を見てもルジャンドル記号はまったく使われなかったのですが,数学の記号としてはルジャンドルの記号の方が簡明さにおいてはるかにまさりますし,ガウスもまたそれを自認していたということではないかと思います.ガウスが規定したルジャンドルの記号の意味合いは今日では広く受け入れられているものと同じですが,この記号の提案者のルジャンドル本人の意図とは異なります.ルジャンドル記号の意味を今日のものに取り替えたのはだれかというのは,長年の素朴な義慰問だったのですが,実はガウスその人なのでした.これはこれで小さな発見で,驚きもまた新たでした.ついでに言うと,四次剰余相互法則の証明が書き留められた紙片には,四次指標を表すために,ルジャンドルの記号と同型の記号が採用されています.
 それからさらにもうひとつ,これは相互法則の理論の根幹に触れることですが,四次剰余の理論の理論展開にあたり,ガウスは「一般化されたフェルマの小定理」を基礎に据えました.ところが,フェルマの小定理から出発してルジャンドル記号を導入し,そのうえで相互法則を提案するという道筋は,平方剰余の理論の場合,まさしくルジャンドルが採用した道筋でもありました.二つの異なる正の奇素数間に成立する法則を探索しようとするルジャンドルに対し,ガウスのねらいは平方剰余の理論の「基本定理」を確立するところにあったのですから,ルジャンドルのようにフェルマの小定理から出発する理由はありませんし,実際,ガウスはD.A.ではそんなことはしませんでした.ところが四次剰余の理論ではルジャンドルの路線が全面的に採用されたのですから,驚きもまたひとしおです.ただし,ガウス数域においてアリトメチカを確立することからはじめて,フェルマの小定理の一般化すること等々,一歩ずつの歩みを実際に運ぶのは大きな困難の伴う作業ですし,ガウスといえども生涯を費やすほどの歳月を要したのでした.

(ガウス119)ガウスの数論の回想(1)

ガウスの数論のはじまりを尋ねると1795年にさかのぼります。この年のはじめ、満17歳のガウスは平方剰余相互法則の第一補充法則を発見したのですが、それからまもなく第二補充法則と平方剰余相互法則の本体を発見し、証明にも成功しました。その証明もいくつもあり、D.A.では二つの証明が記述されましたが、未発表のものも合わせると、ガウスは全部で8通りの証明を見つけました。平方剰余の理論と同時に高次冪剰余の理論の方面にも目を向けて、任意次数の高次冪剰余相互法則の存在を確信し、その姿形を明らかにしようとして努力を続けました。この試みは難所が多く、たいへんな苦心の末にともあれ成功し、二篇の論文を書いて四次剰余相互法則とその二つの補充法則を公表したのですが、そのときガウスはすでに50代でした。第一論文は1828年、第二論文は1832年に公表されました。1795年から1832年まで、この間、実に37年という歳月が流れています。
 ガウスは数論ばかりを研究していたわけではなく、ゲッチンゲンの天文台のでの仕事があり、大学の講義もありました。何よりも、四次剰余相互法則というのは明確な形で提示されていたのではなく、若い日のガウスが存在を確信したというだけなのですから、ガウスの心に描かれたイメージにすぎませんでした。ガウス本人にしても、そのような何物かがきっと存在するであろうと思っただけのことで、はたして本当に存在するのかどうか、何も保証はありませんでした。あるやなきやの法則ですから、期待に反して見つからないことも十分にありえます。そんな危うい探索の日々を10代のある時点から晩年にいたるまで継続したのですが、どうしてそんなことができたのでしょうか。ガウスの数論研究の姿を回想するとき、もっとも不思議で、神秘的な感慨に襲われるのはこのようなところです。
 このような神秘感はオイラーの数論には感じられず、この一点においてオイラーとガウスは明確に隔たっています。ガウスは数論の領域での思索の対象を自分で発見したのですが、オイラーの場合にはフェルマという先行者がいて、オイラーはフェルマの言葉の数々に証明を与えようとする試みを通じて数論に分け入ったのでした。証明できるものは証明し、証明できなかったものはラグランジュに受け継がれました。フェルマの枠を越えて独創の域に達した数論的思索も現れましたが、足取りは非常に堅実で、ガウスのようにあるやなきやの幻影をどこまでも追い求めるという様子は見られません。ガウスから受ける強い印象は「詩の心」ですが、オイラーの歩みには「サイエンス(科学)」が感じられます。

(ガウス118)四次剰余の第二論文(19)四次剰余相互法則

ガウス素数m=a+biはプライマリーとすると,プライマリーというものの規定により,a-1とbは同時に「ある奇数の2倍」であるか,あるいは同時に「ある偶数の2倍」であるかのいずれかになります.前者の場合には,二つの合同式
  a≡1, b≡0 (mod.4)
が同時に成立し,後者の場合には,二つの合同式
  a≡3, b≡2 (mod.4)
が同時に成立します.そこで両者を区別して,前者のタイプの法を第一種と呼び,後者のタイプの法を第二種と呼ぶことにします.有理数域での平方剰余相互法則では,4を法として1と合同になる素数と3と合同になる素数が区別されましたが,第一種と第二種の法を区別するのは,数学的状勢がよく似ています.さて,このときガウスは,ガウス整数域において次のような形の相互法則が成立するという予想を立てました.

《a+bi, a'+b'iは,それらの随伴数のうちプライマリーであるもの,すなわち法2+2iに関して1と合同になる素数を表すとしよう.このとき,もし二つの数a+bi, a'+b'iの両方,もしくは少なくとも一方が第一種に属するなら,すなわち法4に関して1と合同なら,数a+biの法aヤ+bユiに関する四次剰余指標は,数a'+b'iの法a+biに関する指標と一致する.これに反し,もし二つの数a+bi, a'+b'iがいずれも第一種に属さないなら,すなわち両方とも法4に関して3+2iと合同なら,一方の数の他方の法に関する指標は2だけ相違する.》

二つの素数m=a+bi, m'=a'+b'iの一方を法として合同式を考えるとき,「mのm'に関する四次指標」と,「m'のmに関する四次指標」との間には,上記の定理に見られるような一定の規則があるというのが相互法則の主張です.ガウスはこの法則を帰納的に発見し,第二論文には具体例に沿って,発見の手順が示されています.ですが,第二論文の段階では証明は与えられませんでした.ガウスはこう言っています.

《だが,この定理のきわめて大きな単純さにもかかわらず,その証明は高等的アリトメチカの隠された秘密に属している.この証明は,少なくとも状勢がどのようになっているのかという点については,繊細をきわめた研究によりはじめて遂行することができるが,そうするとこの論文の限界をはるかに越えてしまう.そこでわれわれは,この証明の公表ならびにこの定理と,この論文の冒頭で帰納的考察を通じて確立した諸定理との関係の解明を,第三番目の論文まで留保することにする.》

ガウスは四次剰余相互法則の証明をすでにもっていたようで,第三論文の中で証明を記述する考えだったことがわかりますが,この計画はついに日の目を見ませんでした.四次剰余の第二論文は,数論の領域でガウスが公表した最後の論文になりました.
 四次剰余相互法則の表明に続き,第二論文の末尾では,数1+iとその随伴数の指標を与える公式が確立されています.この法則も帰納的に発見されたのですが,これについては証明も与えられました.

 数     指標 ≡(下記の数値と合同になるという意味)
  1+i    (-a^2+2ab-3b^2+1)/8
  -1+i    (-a^2+2ab-3b^2+1)/8
 -1-i    (-a^2+2ab-3b^2+1)/8
 +1-i    (-a^2+2ab-3b^2+1)/8

この法則は,「ガウス整数域における四次剰余相互法則の第二補充法則」です.第一補充法則については指標の計算が簡単で,法則らしいものは何もありません.

(ガウス117)四次剰余の第二論文(18)

第一論文で有理数域における四次剰余の理論を取り上げたとき,与えられた法に関し,その法で割り切れない数を四つのクラスに区分けしました.このアイデアはガウス数域に移っても維持されます.ここで,四つのクラスというときの「4」は四次剰余の「4」でもあることに注目しておきたいと思います.
 ガウス整数域において,法mは素数とし,しかもその随伴数のうちでプライマリーであるものとします.平方剰余の考察にあたり,mで割り切れないガウス整数を二つのクラスに区分けしましたが,そのときの区分けの手掛かりは(ガウス整数域での)フェルマの小定理でした.それによれば,kはmで割り切れないガウス整数とするとき,合同式
  k^(p-1)≡1 (mod.m)
が成立します.そこでk^(p-1)-1を
  k^(p-1)-1=(k^((p-1)/2)-1)( k^((p-1)/2)+1)
と因数分解したのですが,この分解はさらに進行し,
  k^(p-1)-1=(k^((p-1)/4)-1)(k^((p-1)/4)-i)(k^((p-1)/4)+1)(k^((p-1)/4)+i)
となります.mは素数ですから,右辺の四つの因子のいずれかひとつはmで割り切れます.そこで,
 k^((p-1)/4)≡1 (mod.m)となる数を第一のクラスに算入し,
 k^((p-1)/4)≡i (mod.m)となる数を第二のクラスに算入し,
 k^((p-1)/4)≡-1 (mod.m)となる数を第三のクラスに算入し,
 k^((p-1)/4)≡-i (mod.m)となる数を第四のクラスに算入します.
数kの法mに関する四次指標λを,数k^((p-1)/4)が合同になるiの冪の冪指数と定めると,合同式
 数k^((p-1)/4)≡i^λ(mod.m)
が成立しますが,i^4=1ですから,法4に関して合同な指標はみな同値と見なければなりません.i^0=1, i^1=1, i^2=-1, i^3=-iとなることに注意すると,第一のクラスの数はすべて同一の指標λ≡0 (mod.m)をもつこと,第二のクラスの数はすべて同一の指標λ≡1 (mod.m)をもつこと,第三のクラスの数はすべて同一の指標λ≡2 (mod.m)をもつこと,第三のクラスの数はすべて同一の指標λ≡3 (mod.m)をもつことがわかります.そこで,各々のクラスに対して,それぞれ四次指標0, 1, 2, 3を割り当てるのが相応しいことになります.
 第一のクラスは法mに関する四次剰余の集り,第三のクラスは法mに関して平方剰余になる四次非剰余の集りです.第二と第四のクラスには平方非剰余が集められています.

(ガウス116)四次剰余の第二論文(17)ガウス整数域における平方剰余相互法則

数-1+2iとその随伴数に続いて,ガウスは数-3と+3を取り上げて帰納的考察を行っています.それによると,どちらの数も,法
+3+2i, +3-2i, -1+6i, -1-6i, -7, -5+6i, -5-6i, -3+8i, -3-8i, +9+4i, +9-4i, ...
の平方剰余であり,法
-1+2i, -1-2i, +1+4i, +1-4i, -5+2i, -5-2i, +5+4i, +5-4i,
+7+2i, +7-2i, +5+8i, +5-8i, +5-8i, ...
の平方非剰余であることがわかります.そこで,前にそうしたように数と法を入れ換えて,数3を法として取ると,前者の数は法3に関して四つの数+1, -1, +i, -iのいずれかと合同であることがわかります.しかもこれらの数は3の平方剰余です.後者の数についてはどうかというと,四つの数+1+i, +1-i, -1+i, -1-iのいずれかと合同であり,しかもこれらの数は法3の平方非剰余です.上に挙げたいろいろな法はどれも,aは奇数,bは偶数としてa+biという形の素数ですが,このような数と数-3(および+3)との関係は,一方が他方の平方剰余になったり平方非剰余になったりするという点において同一です.
 この帰納的考察を一般化すると,ガウス整数域における平方剰余の理論の基本定理の形が予想されます.

《a+bi, A+Biは,a, Aは奇数,b, Bは偶数となる素数としよう.このとき,どちらの数も他方の数の平方剰余になるか,あるいは,どちらの数も他方の数の平方非剰余になるかのいずれかである.》

ガウスはこれを「きわめて美しい相互法則」と呼んでいます.証明は与えられていませんが,大きな困難を伴うこと,「四次剰余の全理論を内包する一般定理」,すなわち四次剰余相互法則の特別の場合にすぎないことが言い添えられています.
 そこで四次剰余の理論に移ることになりますが,その前に「相互法則」という一語に着目したいと思います.ガウスはD.A.でも引き続く諸論文でも相互法則をいう言葉を使ったことはなく,平方剰余相互法則を指してつねに「平方剰余の理論における基本定理」と呼んでいました.相互法則という呼称はルジャンドルの創意です.ところが四次剰余の第二論文にいたり,ガウスはさりげなく相互法則という言葉を採用しました.ルジャンドルのひそかな影響がはっきりとうかがえる情景です.

(ガウス115)四次剰余の第二論文(16)ガウス整数域における平方剰余相互法則

ここまでのところで,ガウス整数域における平方剰余相互法則の二つの補充法則の姿が明らかになりました.第一補充法則の対象は単数であり,第二補充法則の対象は数2の素因子でした.数2が補充法則の対象として特別扱いされるのはなぜかというと,2は平方剰余すなわち二次剰余の「2」であるからです.この考えを延長していくと,四次剰余の相互法則を考える場合には四次剰余の「4」が特別に扱われることになりますが,4の素因子は2の素因子と同じですから,平方剰余の場合と同じく,1+iとその随伴数を取り上げればよいことになります.
 ガウスの第一論文では数-1と2を対象にして四次剰余相互法則の二つの補充法則が記述され,証明されましたが,それはあくまでも有理数域に留まって見つけたものであり,四次剰余の理論の展開としては不十分です.ガウスは第二論文の末尾で再度,補充法則に立ち返り,ガウス整数域における補充法則の確立をめざします.
 四次剰余の理論に踏み込んでいく前に,ガウスはガウス数域における平方剰余の理論の考察を継続し,奇素数-1+2iを取り上げて帰納的考察の結果を報告しています.すなわち,この数は,法
+3+2i, +1-4i, -5+2i, -5-2i, -1-6i, +7-2i, -3+8i, +5+8i, +5-8i, +9+4i, ...
の平方剰余であり,法
-1-2i, -3, +3-2i, +1+4i, -1+6i, +5+4i, +5-4i, -7, +7+2i, -5+6i, -5-6i, -3-8i, +9-4i, ...
の平方非剰余であるというのです.前者の法の各々を法-1+2iに関する絶対最小剰余に還元すると,+1と-1のみが出現します.たとえば,
+3+2i≡-1, +1-4i≡-1, -5+2i≡+1, -5-2i≡-1, ...
というふうになります.また,後者の法の各々を法-1+2iに関して絶対最小剰余に還元していくと,+iと-iのいずれかの数のみしか出てきません.これだけでも興味の深い現象ですが,数と法を入れ換えると,+1と-1は法-1+2iの平方剰余であること(これは明らかです.+1と-iはそれ自身,平方数ですから),および+iと-iは平方非剰余であること(これは,すでに確立されたガウス数域での平方剰余相互法則の第一補充法則により判定されます)がわかります.これで,次の定理が成立するのではないかという予想が立ちます.

《a+biはその四つの随伴数のうちでプライマリーであるもの,あるいはむしろaは奇数,bは偶数であるものとすれば,a+biが-1+2iの平方剰余であるか,あるいは平方非剰余であるのに応じて,-1+2iはa+biの平方剰余であるか,あるいは平方非剰余になる.》

この定理から,数+1-2i, -1-2i, +1+2iについても類似の定理が導かれます.どれもみな相互法則という呼称にいかにも相応しい命題です.

(ガウス114)「四次剰余の第二論文(15)

ガウス整数域において,数1+iがどのような法に対して平方剰余もしくは平方非剰余になるのかということは明らかになりましたが,1+iの随伴数-1-iについてはどうかというと,これについては数1+iとまったく同じです.1-iについては,1-i=(-i)o(1+i)となることに着目して計算すると,1+iの指標は-1の指標と1+iの指標によbの形によって決まることがわかります.-iの冪(-i)^((a^2+b^2)/2)を計算してみれば即座に判明することですが,この冪の数値は,bが偶数の2倍なら1,bが奇数の2倍なら-1になります(つねにaは奇数,bは偶数と仮定しています).したがって,1-iの指標は,bが偶数の2倍なら1+iの指標と同じであり,bが奇数の2倍なら1+iの指標と反対になります.それゆえ,

《数1-iは,a-b≡±1(mod.8)ならば素数a+bi の平方剰余であり,もしa-b≡±3(mod.8)ならば素数a+bi の平方非剰余である》

というふうに言えることになります.
 数1+iの随伴数にはもうひとつ,-1+iがありますが,この数の指標は1+iと同じです.これで,ガウス整数域における平方剰余相互法則の第二補充法則の姿はすっかり明らかになりました.

(ガウス113)四次剰余の第二論文(14)ガウス整数域における四次剰余相互法則の第二補充法則

平方剰余相互法則の第二補充法則をガウス整数域において考えると,数2の素因子である1+iを取り上げて,「1+iはどのような法の平方剰余もしくは平方非剰余になるだろうか」という問題が現れます.法としては,その四つの随伴数のうちプライマリーであるものを取り上げることにしてさしつかえません.ガウスは帰納的考察により「きわめて美しい定理」を発見したと言っています.
 ガウスは計算の結果を述べているのですが,数1+iは法
-1+2i, +3-2i, -5-2i, -1-6i, +5+4i, +5-4i, -7, +7+2i, -5+6i, ...
の平方剰余であり,法
-1-2i, -3, +3+2i, +1+4i, +1-4i, -5+2i, -1+6i, +7-2i, -5-6i, -3+8i,
-3-8i, +5+8i, +5-8i, +9+4i, +9-4i, ...
の平方非剰余です.この一覧表を注意深く観察すると,前者の法a+biはすべてa+b≡+1(mod.8)となっていること,後者の法ではa+b≡-3(mod.8)となっていることに気づきます.この帰納的観察では法mはすべてプライマリーですが,mの代りに随伴数-mを取ると状勢は一変し,前者の法に対してはa+b≡-1(mod.8),後者の法に対してはa+b≡+3(mod.8)と変ります.今,一般にm=a+biは奇素数とすると,aとbの一方は奇数,他方は偶数です.そこでaは奇数,bは偶数とすると,簡単に確かめられるようにmと-mのどちらかはプライマリーになりますから,上記の帰納的観察を信頼する限り,1+iは,a+b≡±1もしくは≡±3(mod.8)であるのに応じて,m=a+biの平方剰余もしくは平方非剰余であると言えることになります.これが,ガウス整数域における平方剰余相互法則の第二補充法則のひとつの姿です.

(ガウス112)四次剰余の第二論文(13) ガウス整数域における平方剰余相互法則の第一補充法則

ガウス整数域において四次剰余相互法則の確立をめざすのが第二論文のテーマですが,四次剰余の理論に移る前に平方剰余の理論を語ろうとするのは,四次剰余の理論のためのいわば瀬踏みにほかなりません.ガウスが言うには,「与えられた法に対し,不合同剰余の完全系を二つのクラス,すなわち平方剰余のクラスと平方非剰余のクラスに分けるのは容易である」というのですが,これは完全系に所属する数kのひとつひとつについてk^((p-1)/2)を計算し,≡1となるのか,あるいは≡-1となるのかを検証すればよいのですから実行可能なことで,ガウスの言葉の通りです.不合同剰余の完全系に所属しない他の数は,この完全系のいずれかの数と合同になるのですから,それらが所属するクラスもまた定められます.しかし,とガウスは続けて発言するのですが,「与えられた数がその平方剰余になる法を,その平方非剰余になる法と区別することを可能にしてくれる判定基準に関する問いは,はるかに困難である」.これもまたガウスの言う通りで,有理整数域において,合同式
 x^2≡-1 (mod.p)
が解をもつような素数p,すなわち与えられた数-1がその平方剰余になる法pを見つけるのは非常に困難です.答は「pが4n+1型であること」というのですが,これはガウスが17歳のときに発見した「あるすばらしいアリトメチカの真理」(D.A.の緒言),すなわち平方剰余相互法則の第一補充法則にほかなりません.
 ガウス整数域で同じタイプの問題を考えてみますと,まず実単数+1と-1 はいずれも平方数ですから(+1は+1の平方,-1はiの平方です),すべての法に対して平方剰余になります.複素単数iと-iについてはノルムが8n+1という形のすべての法の平方剰余になり,ノルムが8n+5という形のすべての法の平方非剰余になります.これはp=8n+1, p=8n+5と置いて(i)^((p-1)/2) と(-i)^((p-1)/2)を計算してみれば即座に明らかになることで,p=8n+1のときは両者の値は=1となり,p=8n+5のときは両者の値は=-1となります.
 これは法のノルムの形状を基準にして考えたのですが,今度は任意のガウス素数mを法として取ってみます.法としては,m自身でなくとも,その随伴数im, -m, -imのどれを法として採用してもさしつかえませんから,プライマリーであるものを取ることにしてみます.m=a+biと置き,aは奇数,bは偶数とします.すると,つねにa^2≡1(mod.8)となります.b^2の方は,bが偶数の2倍であるか,あるいは奇数の2倍であるのに応じて≡0もしくは≡4(mod.8)となります.したがって,mのノルムp=a^2+b^2は第一の場合には≡1(mod.8),後者の場合には≡5(mod.8)となりますから,+iと-1はそれぞれの場合に応じて法mの平方剰余もしくは平方非剰余になります.これが,ガウス整数域における平方剰余相互法則の第一補充法則です.

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プロフィール

オイラー研究所の所長です

Author:オイラー研究所の所長です
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オイラーを研究して40年。所員募集中。
オイラー生誕300年を期して熱くオイラーを語り合いましょう。
西暦2011年は岡潔先生の生誕110年の節目の年です。
西暦2013年は岡潔先生のエッセイ集『春宵十話』が刊行されてから50年目の節目です。

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